「CD」と「SD」について(その1)

私、吉島智美は、最初の著書 「サッとしまえる・パッと取り出せる スッキリ!整理生活(青春出版社)」 の中で、『整理整頓を妨げる要因』として以下の3項目を挙げています。   1.収納と、収納法の要因 2.周辺環境による要因 3.考え方、心理的な要因   1は、収納や収納方法の改善によって解決します。こちらの解決策については、 多くの著書や雑誌での特集にて触れられているので、すでに多くのノウハウが 世に知られています。   しかし、2と3については、まだ日本では多くが知られていません。 1よりもやっかいな問題なのですが、多くの人は、1の手法によって解決を 試み、うまくいかずに失望しています。   2と3は、JAPOの「お片づけのプロ」養成コースで重点を置いて説明している、 重要なポイントですが、「お片づけビジネス」が日本より早く普及したアメリカでは、 どのような議論がなされているのでしょうか?   アメリカのオーガナイザーたちの意見交換の場に、NAPOという組織があります (National Association of Professional Organizers)。 その中で、しばしば話題になるキーワードのひとつに、“CD”という言葉があります。   これは、“Chronic Disorganization(慢性的に散らかっていること)”の略で、 「慢性的に片づかない」クライアントの総称、として使われています。   「慢性的に片づかない人」と聞いて、「ADD」「ADHD」という言葉を思い出す人もいる かもしれませんね。注意欠陥・多動性障害を示す言葉です。   しかし、情報として「ADD」「ADHD」という知識を知っていても、私たち整理整頓のプロは、 この言葉を容易には使いづらいものです。   なぜなら、これらは医学用語に近いもので、専門外の私たちは、クライアントと これらの言葉とを結ぶ、専門知識を持っていないからです。   「医者に『ADHD』と診断された」と自己申告してくるクライアントさんの お手伝いをしたことはありますが、私自身「あなたは『ADHD』かもしれない」 などとは、とても言えませんし、言ったらうそになりますから。   話は戻りますが、NAPOの姉妹組織に、「NSGCD」というグループもあります。 こちらは、“National Study Group of Chronic Disorganization”と言いまして、 “CD”専門に研究しているグループのことです(現在はICDと改称しています)。   ここまで研究組織が細分化しているのを知り、 「さすが、アメリカはオーガナイズの先進国だなあ」と感じました。   NSGCDでは、CDを「複雑な過去の影響で、変化への努力が空回りする人」と 定義しています。   「複雑な過去」の影響で、思考プロセスや深層心理に、非論理的な部分が存在していて、 それが「片づけ」への障害になっているのです。   自分でも何とかしたいと思っているのに、いくら片づけてもうまくいかない。 自信を失い、周囲からも白い目で見られ、ますますイヤになっていく。 「CD」とは、上に挙げた3「考え方、心理的な要因」が、特に強く作用している タイプと言えるでしょう。   この「CD」に対し、オーガナイザーのデビー・スタンリーさんは「SD」という 言葉を作りました。   これは“situational disorganization”の略で、「周辺の状況や環境が原因で片づかないこと」 という意味です。片づかない原因が、結婚、引越し、家族の死、赤ちゃんの誕生など、 その時々の外的要因の変化をきっかけに、引き起こされる場合です。   私がクライアントと接した体験では、その他に、家族の病気、入院、親の介護開始、 同居人数の増加、などがありましたね。   それ以前は片づいていたのに、ある節目を境に片づかなくなり、数年経て激しく 散らかったケースが、これにあたります。上の2「周辺環境による要因」で 片づかないパターンといえるでしょう。   興味深いのは、「CD」を疑わせるほど激しく散らかっている部屋でも、クライアントの 話をよくよく聞いてみると、実は「SD」だった。というケースが見られることです。   SDなら、現在散らかっていたとしても、片づける力を持っています。 自力で回復することも可能ですが、オーガナイザーが手伝うことで、より早く 片づけられます。   私も、慣れないうちは見極めも困難でしたが、時間はかかるものの「SD」なら、 さほど悩むことなく解決出来たケースが多かったです。   一方で「CD」対策は、今でも課題のひとつで、私自身自信を持って 「こうだ」と言えるほど、定パターンの答えを出すに至りません。   医師に「ADD」「ADHD」と診断されたクライアントさんも大勢いらっしゃいましたが、 少なくとも現段階で言えるのは、相手に対しステレオタイプな判断をすることが 一番危険だということ。いつにも増して、相手をよーく観察しています(つづく)。   吉島智美(2009/04/10+加筆)
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