コラム:片づけのプロはモノを通して変化を及ぼす(その4)

「モノが、人生を豊かにしてくれる」という大量消費社会の考え方に、限界が来 ていることは、昨今の金融危機や資源クライシスを見ても分かります。   しかし、これまであまりに長く、大量消費が良しとされる社会が続いてきています。   日本でも最近「お片づけブーム」が受け入れられ、変化の時期を迎えているとはいえ、 古い価値観に囚われているクライアントに対して、これからの時代にふさわしい 「モノへの執着からの解放」という考え方を説くには、苦戦もするでしょう。   実際、「何とか、モノをほとんど捨てずに整理できないか」と相談に来られる クライアントも、まだまだ大勢います。   古い価値観と新しい価値観のぶつかり合い、その最前線にいるオーガナイザーの先達者は、 具体的にどのように、クライアントに説いているのでしょうか。   インタビュアーはピーター・ウォルシュさんに、具体的な質問を投げかけていきます。   次の質問は 「モノが人生を変えるわけではないということを、どう理解してもらっていますか?」 です。   多くのモノを所有することを良しとする価値観を手放せないクライアントに、 どう切り込んでいるのか。興味深い質問ですね。   ウォルシュさんはこう答えています。 「私たちオーガナイザーはクライアントに対し、『モノをどうするか』、という思考の 枠組みから切り離し、『人生をどうするか』という思考に入ってもらいます。   これは多くの人にとり、人生初めての経験でしょう。 モノを所有するしないを値段や使い勝手、その他に基づいて決めるのではなく、 『彼らが望む人生』に必要かどうか、に基づいて決めることをサポートします。   もし彼らが、自分の人生を積極的にハンドリングしないのであれば、彼らの人生は、 別の何かによって操られてしまうことになるのです。」     ウォルシュさんの回答は明快です。   クライアントに、モノをどうするかという目先の狭い視野を手放してもらって、 「これからの人生」をどうするか、に向きあってもらう。   そして、自分の人生を自分でコントロールしなかったら、他の何者かに人生を 左右されてしまいますよ、と説く。   質問に対し、明快かつストレートに切り込んでいます。   クライアントにしてみれば、住まいやモノに向き合うことをきっかけに、 思いがけずパワフルなコーチングを受けているような感覚になるのでしょう。   さらにウォルシュさんは、具体的な話もしています。   「たとえば、私はクライアントを外に連れ出し、家を見てもらいます。   そして彼らに尋ねます。   家庭やビジョン、家族、結婚、他者とのつながりについて、当初はどんな夢を 抱いていましたかと。   オーガナイザーには、多くの人が全くしてこなかった話し合いを円滑に進行させる 必要があります。   彼らが住空間に何を求めているかを質問によって引き出し、話し合いを始めて もらう、という役割があるのです」     ここでウォルシュさんは、オーガナイザーの「お片づけ」以外の重要な役割に 触れてます。   クライアントに目先のモノではなく、自分たちの人生や家族のビジョンなど重要な テーマに向き合い、話し合ってもらうこと。   そしてオーガナイザーは的確な質問によって、話し合いの円滑な進行役を務めるべき、 とあります。   JAPOが従来から、コミュニケーションや質問法の重要性を説き、セミナーでも 重点的に扱っているのは、この「役割」を意識してのことでしたから、強く共感できます。   「モノ」に向き合う事をきっかけに、本当に大事なことについて家族で コミュニケーションをとることで、「お片づけ」の妨げになっている見えない障害が、 解消に向かうことが多々あるのです(つづく)。   吉島智美(2010/03/26+加筆)
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