コラム:片づけのプロはモノを通して変化を及ぼす(その5)

「人とモノとの関係性」というテーマのコラムの5回目です。   これまでのコラムでは、アメリカのオーガナイザーであるピーター・ウォルシュさんの インタビューを通し、人のモノに対する思いが政治経済にも影響していることを 実感しました。 また前回は、ウォルシュさんのクライアントに対するユニークなアプローチ法を 見ることができました。 これまでの流れを受け、今回も具体的なテーマを扱っていきます。   インタビュアーが次にウォルシュさんに投げかけるのは、「思い出の品」の扱いです。 日本の整理本・収納本でも、盛んに扱われるテーマですね。   オーガナイザーがどうしたらクライアントに、モノが手元になくても思い出を残せることを 理解してもらえるのか、というテーマ。ウォルシュさんはどう答えるのでしょうか。   「オーガナイザーは『モノ自体』より、『モノが持っている力』を処理する  必要があるのです。    よく私が気付くのは、クライアントが『モノの力』を感じている時、あるものを 見失っているということです。 私はそれを「価値のヒエラルキー(順序)」と呼んでいます。 モノの優先順位を見失っているので、彼らにとっては全てのベビー服、子供の作品、 落書きに至るまで、あらゆるモノの価値が同等なのです。   これは、モノに対する誇りや敬意が欠けていることになります」   思い出の品に執着しているクライアントは確かに、「どれもこれも大事」という 心境に陥っています。   子供や、亡くなった方への愛情をモノに投影し、そのうちのほんの一部を手放すことにさえ、 罪悪感を覚えて抵抗を覚えるのです。   でも、ひとつひとつのモノを改めて見返してみると、思い入れが特に強いモノと、 印象の薄いモノとに仕分けできるものです。逆から考えれば、「何もかも手放せない」 状態は、大事なモノと、そうでないモノとの区別が出来ない状態を意味するので、 大事なものを大切にしていないことになる。それをウォルシュさんは、「敬意に欠ける」と 指摘しているのでしょう。   とはいえ、思い出のモノへの執着を手放すのは大変なこと。   個人でそこまで踏み込めない場合は、オーガナイザーがサポートして モノの優先順位を取り戻す仕分けをするのが有効ですが、ウォルシュさんは どう対処しているのでしょう。   それはズバリ、「相手に、モノについてのストーリーを話してもらう」ことだそうです。 詳しく見てみましょう。   「モノの優先順位を取り戻すために、クライアントにモノについてのストーリーを  話してもらうのは非常に大切なプロセスです。    彼らがいったん話し始めれば、多くのアイテムが突如、重要でなくなるでしょう。    クライアントはモノから思い出をより分け始めます。  そして特に強い思い入れがあるモノを取りだし、名誉と尊敬の念をもって、  それらをディスプレイします。  その後は、たいてい残りのモノの力は消えるのです」   ウォルシュさんの回答は、あっけないほどにシンプルです。 「モノについてのストーリーを語ってもらう」ことで、見失っている優先順位を取り戻せる、 とのこと。少し飛躍しがちなこのセンテンスを、吉島の解釈で以下に説明します。   吉島の経験上「思い出大切タイプ」の整理を手伝う作業は、難度が高い部類に入ります。 オーガナイザー側が「手放してもらおう」とすればするほど、作業は膠着状態に 陥りがちになります。   でも、そんな手ごわいクライアントも、思い出の品について語り出すと、とたんに雄弁に なることがあります。彼らの思いを上手に引き出し、整理してあげることで、 彼らの考えるモノの優先順位が、オーガナイザー側に見えてくるのです。   ただし、何と言っても思い出の品は彼らの「聖域」ですから、 アプローチを工夫しないと、こちらが痛い目にあうリスクもあるんですよね。 ウォルシュさんの言う事を単なるテクニックとして受け止めると、 危険な側面もあるのではないかと考えています。   ウォルシュさんのアプローチ法は、大きなヴィジョンに基づいていて、 単なるお片づけを超越していますね。   次回が最終回となります。
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