オーガナイザーの「完ぺき主義」(その2)

前回、オーガナイザーが陥りがちな「完ぺき主義」について書きました。     より良い仕事をしようとして、技術的に高度なノウハウを家族やクライアントに 押し付けてしまうと、相手がキープできないのでリバウンドしてしまいがち。     相手が維持管理できる形になっているかどうか、自問することをお勧めしました。     アメリカにも、「完ぺき主義はほどほどに」と説くオーガナイザーがいます。 アメリカで活躍するオーガナイザー、マドレーヌ・デニトさんのレポートから引用してみましょう。     マドレーヌさんは、オーガナイザーが集まる数年前のイベントで、ある人が   「私は、『オーガナイザー』という言葉どおりの存在になります!」   と公言しているのを耳にして、気になったそうなのです。     彼女は、他のオーガナイザーが持っていない特質を持っているのかしら? 家は無菌状態の如く衛生的で、完ぺきに美しく均整の取れた収納があるのかしら? 渋滞に巻き込まれないようにして、遅刻や約束のキャンセルを避けているのかしら?     マドレーヌさん曰く、彼女の出会ってきた様々な専門分野を持つオーガナイザーは、 そんな完ぺきな存在ではなかったそうなのです。     それぞれがユニークな個性と経験を持っていましたが、それと同時に、自分自身の問題点をも 持ち合わせていた、といいます。     緊急事態にある人もいたし、お金や健康の問題に苦しんでいる人もいたそうです。     「オーガナイザーという言葉どおりの存在」がもしあるとすれば、それはまさしく 「整理整頓の鬼」のような存在で、自宅は共有スペースだけでなく家族の部屋まで整理された 状態を保ち、一切を妥協しないパーフェクトな仕事ぶり。 時間管理も30分刻みのスケジューリングを組んで、軽やかにこなすイメージがあります。     しかし、私はとてもそこまで出来ないし、同業の友人たちの中にも、そんな完ぺきな人は 見当たりません。     私個人の経験で言えば、家族を含め他人は、自分の思い通りになるものではないと思っていますし、 一時的にスケジュールの集中した期間が続いたことがありますが、無理をするとたいてい体調不良や 家族の病気が起き、予定の大幅な組み直しをせざるを得なくなったりします。     マドレーヌさんは、こうも書いています。   「お客様と一緒に一日中働いた後は、私達は家に着くなり、身体的にも感情的にもぐったり。 私たちの心と体は疲れ果てて、夕食の準備、日課である洗濯、机の上に積まれた書類の整理、 そして家族や友達の役に立つこともままなりません」     彼女の言う通り、オーガナイザーの仕事、特にお客さま宅での終日作業は「激務」となる ケースがあります。     その場合、体にも心にも負担になります。 完ぺきにこなそうとして張り詰めた状態を続けると、自分にかなりの負荷がかかるのです。     仕事に夢中になっていると、「躁状態」になって体の負担を見逃すことがあるので、私の場合、 体調不良や家族の病気はSOSのサインとして受け止めています。     有難いことに、身体や家族が、危険水域に達したことを教えてくれているのです。     マドレーヌさんは、こうも言っています。   「私たちはプロフェッショナル・オーガナイザーとして働いていますが、人間だし、 仕事が遅れたりすることも許されるのです。     一見、お客さまに対して不誠実のようにも思えますが、それは違います。     私たちは、面倒な雑用が重なり、遅刻したとしても、プロとして、すぐ元の状態に戻れるからです。 遅刻して気まずくても、普段の自分に戻り、挽回する努力をすればいいのです」     私も多くのミスを重ね、時間を守れず、恥ずかしい思いをしたこともあります。   そのとき、ミスをした自分を自分で責めて、頭が真っ白になるのではなく、 「やってしまったことは仕方がない。冷静さを取り戻して挽回しよう」と開き直って、 お客さまの信頼を取り戻してきました。     もちろん失敗が生じないよう努力することも重要ですが、「失敗しないように」と固くなるより、 ある程度のグリップの柔らかさを持ったほうが、いい仕事ができるのではないでしょうか。     吉島智美(2009/08/13+加筆)
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