お片づけのプロとクライアントの幸せな関係(その3)

「部屋ではなく人を見る」を地で行くオーガナイザー、マリリン・エリスさん のレポートの3回目です。   エリスさんとクライアントのヘレンは、モノの選別作業をしていました。 ヘレンさんは年配の方にも関わらず、作業は順調に進んでいたようですが、 ある「モノ」の登場で雰囲気が一変。   果たして、それは何だったのでしょうか?   クローゼットの下の方から、とても色褪せて、でこぼこで、  よだれのシミが付き、明らかにくたびれた枕が出てきたのです。    ヘレンはその枕をぐいっと掴み、愛おしそうに胸に抱き、  『この枕を、どうしたらいい?』 と心配そうな声で尋ねました」     「本当は、ヘレンに『私をからかっているの?』と言いたかったのです。  あれだけ割り切りが早かったのに、目の前の汚れた枕に迷うとは  信じられなかったんです」     作業のリズムを狂わせたのは、汚れた枕でした。直接肌と接するモノだから、 長い間使っていなければ「即捨て」と判断してもおかしくありません。 ましてや、モノの要不要をテキパキと判断できていたクライアント、です。 おそらくヘレンさんは、この枕よりもっと状態の良いモノを、どんどん処分して いたのでしょう。   ところが、他人から見たら明らかにゴミに近いようなモノの選別に迷っている。 そして、一生懸命言い訳を考えている。   何度現場経験を重ねても、クライアントの意外な反応に驚かされることは 多いものです。 最初は驚いても、経験豊富なオーガナイザーはすぐに頭を切り換えます。     「でも、私は『ジャッジを下さない」という自分自身のルールに  忠実に踏みとどまり、作業を中断してこう尋ねました。    『この枕について話してもらえますか?』    ヘレンは深呼吸をして、答えるのに間をおきました。 私は彼女が、枕を持ち続ける理由を考えているのだと感じました。    『まだ使える』 『高かった』など、ありきたりの答えを想像しましたが、 答えは驚くべきものでした」     クライアントの意外な反応に驚かず、相手に対してジャッジを下さないのが、 オーガナイザーの基本的な態度です。 そしてエリスさんは枕を処分するよう説得したりせず、相手に枕にまつわる ストーリーテリングを促しています。   モノにまつわるエピソードを聞きだすことは、本人にしか分からない判断基準を 引き出すことにつながります。   このあたりの自然な流れは、ぜひ見習いたいものですね。   次回は、この枕の「素性」が明らかになります。
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