お片づけのプロとクライアントの幸せな関係(その5)

「部屋ではなく人を見る」を地で行くオーガナイザー、マリリン・エリスさん のレポートの5回目です。   前回は、片づけ作業中に発見した家族の宝物「おばあちゃんが鶏の羽をむしって 作った枕」にこだわりを見せるシーンがあり、そしてモノに対する執着を手放すまでの エピソードを紹介しました。   相手を説得したりせず、相手が気づくのを期待せずに待つ自然なあり方が 印象的でした。   今回の話は、同じクライアント、ヘレンさんとのエピソードの続きです。   「2、3週間後、ヘレンはもう一度私を呼びました。   彼女は、今まで同居していなかった3人の家族が同じ家に住んでいることに 圧倒され、自分の避難部屋を作りたかったのです。   果たして、私は部屋を変えることができたのでしょうか?」     「問題の部屋は、家の中で最も小さな部屋でした。    中にはリクライニングチェアがあり、とても古いキャビネットタイプのミシンがあり、  巨大な机がありました。    ヘレンは、テレビを見たり、裁縫や工芸をしたり、レディースクラブの仕事を  し続けられる避難場所が欲しかったのです」   ある日突然、息子家族が同居を始める。家族が増えてにぎやかなのはいいのですが、 プライバシーの確保が難しくなるのは、自立して生活してきた人にとっては 大きなストレスとなります。   私も日本で、このようなパターンの依頼を受けるケースが徐々に増えてきました。   「おじいちゃんおばあちゃんにとって、孫と一緒に暮らせるのは幸せに違いない」 という考え方は、価値観が多様化した現代社会では一方的な見方に過ぎないと 思うのです。   このような「ライフスタイルの変化」に伴うストレスの解消手段として、お片づけのプロの 仕事は非常に効果的です。   引っ越したり、家をリフォームしたり新築するのも有効ですが、片づけによる解決は 何といってもリーズナブル。   このことが日本にも、今後もっともっと広まっていけばいいなと思いますし、 お片づけのプロにとっての、大きなアピールポイントのひとつになると思っています。   「次の2、3週間にわたり、私たちは並んで作業しました。   まず始めに彼女の好きな紫色を壁紙に選び、古い机の代わりに小さな机を 設置し、クローゼットのドアを取り外して、   内側に生活用品を入れるための吊戸棚をつけ、裁縫や工芸用のワークトップ として使えるよう、壁面に折り畳みテーブルを取り付けました」     なかなかリアルな、お片づけ作業のシーンが見えてきますね。   これまでいくつもアメリカのレポートを紹介してきましたが、実際の片づけ作業を 紹介したレポートは、あまり紹介してこなかったように思います。   吊戸棚や、壁面にテーブルを取りつけたりなど、DIY的なこともやっているのですね。   日本のテレビに出てくる収納名人みたいで、面白いなと思いました。   「それから私は、ポケットファイルと、2つの伸縮アーム付き照明スタンドを 収納するための壁面収納棚の設置を思い付きました。   そこで浅型の棚収納を、唯一残った壁面に設置することを提案したんですね。   ですがこの時になって初めて、私はヘレンの抵抗に遭いました。   彼女はまるで何か嫌なもののにおいを嗅ぐように、鼻にシワを寄せ、 頭を振り、はっきりノーと言いました」     お片づけのプロとしての活動に慣れてくると、空間を見ただけで色んな収納の アイディアが湧いてきます。   「こうしたら、絶対に便利だ」と思ってクライアントに提案して、喜ばれることもあれば、 受け入れられないこともあります。   私は、自分の提案内容を相手に受け入れてもらいたい、という期待をなるべく持たず、 クライアントが複数の選択肢から選べるように心がけています。   プロ側がひとつのアイディアに固執しない、ニュートラルな態度でいたほうが、 相手も冷静に提案を受け入れやすいからです。   今回、エリスさんの「浅型棚収納設置」の提案は、ヘレンさんに拒否されました。 このように、「絶対よくなる」と確信して提案したアイディアが、受け入れられないことも よくあることです。   しかし、この「収納棚設置拒否」の話にはオチがあるのです。 続きは次回にてご紹介します。   吉島智美(2011/01/31+加筆)
PageTop