お片づけのプロとクライアントの幸せな関係(その6)

クライアントと幸せな関係を築いているオーガナイザー、 マリリン・エリスさんのレポートの最終回です。   「おばあちゃんが鶏の羽をむしって作った枕」にこだわりを見せた クライアント・ヘレンさんとのリピート依頼の話。   息の合った二人はテキパキと片づけ作業を進め、ヘレンさんから 信頼されているエリスさんも、改善案をあれこれ提案。   壁面の棚収納の提案だけは強く拒否されるも、クライアントの考えを柔軟に 受け入れる態度が印象的でした。   今回も、ヘレンさんとのエピソードの続きです。   「予定していたお片づけを終え、私達は入口の前に立ち、 やりとげたことを賞賛しあいました。    すると突然、彼女が新しいデスクチェアが必要だと言いました。   デスクチェアを買いに車を走らせている間、彼女は普段と違って、 とてもおしゃべりでした。   私は、彼女が何か企んでいるのでは?という予感がありました」   「お店の中の全ての椅子をオーディションし、いくつかの椅子のキャスターを  通路で試し、ヘレンはついに自分のお尻に合う椅子を見つけました。    そして彼女は突然静かになり、妖精のような微笑を浮かべながら、 私の背後を指さしました。棚の上に2つのアーム付き照明があったのです。    そう、ヘレンの部屋で見た、私の提案が拒否されたスペースの光景に似た 商品展示を見て、彼女は言いました。   『そういえば、ポケットファイルも1組必要だわね。  私の部屋、まだ壁面のスペースも使えるわよね。  あなた、分かってるでしょ?』   エリスさんが、「こうしたら便利よ」をお勧めした壁面収納棚の設置をあんなに ハッキリと拒否したのにも関わらず、お店で自分の部屋そっくりな商品展示を見て、 ヘレンさんは態度を180度豹変させて、プロの意見を受け入れる気になったのです。   まあ、一緒にお店に向かう時から、ヘレンさんの態度には含みがあったようですが。 ジョーク交じりなところに、その場の思いつきでない雰囲気が感じられます。   いかに素晴らしい提案があっても、イメージがわかなかったり、何か受け入れがたい 先入観があったりすると、人は瞬間的に拒否反応を示すことがあります。   でも、その話題が過ぎて冷静さを取り戻すと、自分が拒否した提案がかえって気になり、 もう一度理性的に考え直してしまう、という側面もあるのです。   プロのオーガナイザーが相手と良好な信頼関係を築き、自分の意見もクライアントの 意見も対等に扱っていると、この「揺り戻し」のような現象が自然に発生します。   このプロセスを経ると、拒否された提案はプロの意思ではなく、クライアントの意思に 変わるので、クライアントも後々まで受け入れやすいのです。     最後に、エリスさんはヘレンさんとのやり取りを、こう締めくくっています。   「我慢強く、なおかつ中立的であるのが、プロのオーガナイザーにとって  不可欠なアプローチ方法なのです。    クライアントの憎めない行為や、可愛いジョークを受け入れたことで、 結果的に彼らは新しい考え方や、モノに執着しない生き方に気づき、 受け入れることになったのです。    人生のストーリーも聞くことができましたし、不要品の処分も受け入れてくれました。 彼らもまた、新しい考えと解決策へと導かれたのです」   「クライアントが実際にモノを処分し、問題を解決するプロセスを楽しんだ、 と話してくれることがありますが、私自身も楽しめました、と話しています。    私はクライアントを『人生の整理整頓』へと導いている実感がありますし、 つくづくこの仕事が天職だ、と感じています」   エリスさんの仕事の進め方は、「こうしなさい」と強く相手に伝えていないような 雰囲気があります。   彼女がまさしく「中立的」と表現しているように、相手に強く意見したり、批判したりする こともなさそうです。相手の意見を受け入れ、ニュートラルなポジションを貫き通す態度は、 一見「相手を導く」などとは言えないような姿勢に感じられます。   ところが、紆余曲折を経て結果を見れば、相手はなぜか最終的にエリスさんの 意見を受け入れている。   パワフルではないけれど、これが「ニュートラルの力」なのだと思います。   相手をどうこうしよう、という作為的な意思を超えているところが、エリスさんの本当の 強さだと感じます。   私も大いに刺激を受けたコラムでした。   吉島智美(2011/02/28+加筆)
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